春巻
2012.11.16 Friday

私の好物だということで、
結婚前に南京東路の永安百貨の中にあった小さなお店で
夫に春巻を食べさせてもらった記憶があります。
両親にも春巻を作ってもらってごちそうになったことはありましたが、
当地では春巻の皮が手に入る時と入らない時があり、
朝早く市場へ行っても手に入らなかった時に
連れて行ってもらったのだったと思います。
お店で食べたものも、家で作ってもらったものも、
味付けは実にシンプルであっさり。
日本の中華料理屋さんで食べるそれとはずいぶん異なることに
当初驚きましたが、私は両親が作ってくれた
白菜と椎茸とお肉の餡のものが一番好きで、
以後、自分で作るのはすべて
この3種の具材を用いた餡のものばかりです。
スーパーへ行けば置いている店も多少ありますが、
今でも春巻や餛飩の皮は市場で量り売りで買うか、
手作りするか、それが主流のようです。
結婚してから家が浦東に移り、初めて訪れた時、
福山路の市場の辺りはまだ広っぱが多く、
路上で野菜や雑貨を売る人たちもたくさんいました。
そこにリヤカーでやって来て、作りながら春巻の皮を売る人を
見た時には感動すると共に、何故「今日は春巻の皮が買えなかったから
作るのはまた今度ね」と両親に言われたのかがわかりました。
こういう皮売りの人が来てくれないと、手に入らなかったからなんですね。
日本では、中国の春節(正月)といえば水餃子
というイメージが定着していますが、
上海は南方ゆえに水餃子で祝う習慣がありませんでした。
我が家も水餃子は作りません。春巻を食べます。
今では春巻は年中食べられるものですが、
春節に食べる春巻は、新しい年(春)を迎えるのだということを
否応無しに意識させてくれます。
ところで余談ですが、
冒頭に書いた「永安百貨」、当時は上海華聯商厦という名前でした。
もともとこの場所は上海永安公司(1918年)としてスタートした
高級品を扱うデパートでしたが、1969年に上海第十百貨商店となり、
1988年に上海華聯商厦へ、さらに2005年に名前を戻し今に至ります。
亡くなった婆婆が結婚時にくれたコートにはこの永安百貨の名前がありました。
婆婆が結婚する時に仕立ててもらったものだそうで、
歴史を感じずにはいられません。
春巻は、私にそんな二十数年前の想い出も思い起こさせてくれる
魔法の小吃なのです。