+--[17] 何が何でも--+

 成都へ戻るため、拉薩にある民航オフィスへ行く。空港までのバスに乗るためだ。
チェックの時に何か否定的な言葉を言われたのだが、当時の私にはさっぱりわからなかった。
後でそのときに何を言われたのかわかることになる。

 来た道をがたごとがたごとバスは行く。心なしか行きより帰りの方が長い気がする。
空港のチェックインカウンターへ着くと、飛行機が濃霧のために成都から飛んでこない、ということが書いてあった。
いらいらしながら待ち続けていたら、いきなりカウンターが開いてチェックインが始まった。
ここぞとばかりに他の中国人と同じように列の中に混じる。

 ところが、である。カウンターのお姉さんは無情な一言で私を打ちのめしてくれた。

 「このチケットはだめ」

 前日のフライトも濃霧のために欠航したので、今日乗れるのは昨日のチケットを持っている人だけなのだという。
拉薩のオフィスで言われたことの意味がここでやっとわかった。時すでに遅し。
何が何でもこのフライトにのっからないと、予定が狂ってしまう。

 搭乗手続きが始まった列の後ろにくっついて、ひたすら今日乗せてくれ、と、わめき続ける。
「 だめだ」、と無視され続けるが、同じようにわめいている外国人カップルに出会った。

 彼らは絶対にこのフライトを逃すことができない。これに乗れないと北京からの帰国便がだめになってしまうという。
一緒になってわめき続ける。

 いったんは締め切られてしまったが、
それでもしつこく訴えていたら何とかなるもので、強引に乗せてもらうことができた。座席はもちろん最後尾。

  気流が悪く、激しく揺れるが、それでも機内食に出たりんごをむいて食べる。
今考えれば、みんなナイフを持って搭乗しているのだからオソロシイ。
皮付きまるままのりんごを出すというのもオソロシイ。

 外国人カップルはカナダ人。男性が女性にフランス語を教えていた。彼女に名前を聞かれる。

 「My name is YOHKO.」そう答えると、

 彼女は「なんとスバラシイ!いい名前だ!」と褒めちぎる。

 何がそんなにいいんだろう、と思ったらば、すべては私の大好きなJohnのおかげだった。
「YOKO ONO」 あまりにも同年代に多い名前なので(当時は)気に入っていなかった名前だが、
世界に通じるのか、と思うとまんざらでもなかった。

 途中からは体が飛び出すのではないかと思うぐらい機体が揺れたがなんとか無事に成都へ着陸することができた。

次へ次は、 [18]機内食三昧