+--[27] 日帰り新婚旅行--+

 結婚証が発給されるまでの間、帰国するのも手間なので、上海に滞在して待つことにする。
ならば、新婚旅行へ行こう、ということになり、上海近辺の都市をいくつかまわることにした。

 杭州・蘇州は夏に行ったので、日本人としてはどうしても避けられない南京と、無錫へ行ってみることにした。

 夜中に家を出て上海火車站へ。

 火車に揺られて朝南京に着く。戦争に関する文献は中学生の頃からよく手にしてきた。
生徒会役員をしていたので戦争展へは毎年足を運んだ。
えんちゃんは行きたくなかった(そういうものは見たくなかったようだ)のだが、
あえて私は侵華日軍南京大虐殺遭難同胞記念館へ連れていってもらった。
ここを見学しないとこれからが始まらない気がしたのだ。

 南京は緑多く、落ち着いた雰囲気のステキな場所だ。
また、孫文が辛亥革命後臨時政府の首都として定めた場所でもあり、国民党政府がおかれた地でもある。

 私たちはいくつかの場所をまわって、宿をとることにした。

 ところが、である。

 夫婦といえども、まだ結婚証が発給されていない身、おまけに私は外国人、
同じ部屋に泊まることができないし外国人用のホテルでないと泊まれない。
いくつかの旅社や招待所をまわるが、やはり私が泊まることができないので次から次へとたずねて歩く。
ようやくみつけたホテルは外国人も中国人も泊まることのできるホテルだった。
だが、同じタイプの部屋を、かたや30元、かたや120元支払わねばならないときた。
えんちゃんはキレてしまった。

 「帰るぞ」

 私たちは駅で夕食をとると、その日のうちに南京を後にした。
夜中の3時に家を出て、夜中の3時に家に帰ってきた、とんでもない24時間の旅だった。

 翌々日、気持ちを切り替えて、無錫へ、これまた日帰りの旅に出たのであった。

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