上海燕樂堂

イツモココロニタイヨウヲ

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告別式

一夜明けて葬儀式の時間が迫ってきた。

上海では滅多にスーツを着なくなったナイアガラさん、
真っ黒のスーツが無くて、仕方なく
数年前にちよちよがJCIDのクリスマス会のステージで着た
安物のジャケット(それも淘宝網で80元!)と、
黒のスラックスを持って来たが、
父が昔誂えたダブルの黒のスーツがちょうど良くて
(正確には父の方が腕が短かったらしく、袖が若干短かった)
それを着てもらうことにした。

ちよちよはちよちよで、服がなかった。
なんせ上海では日本のように
厳格に定められているものがあるわけではなく、
婆婆の時も急遽カジュアルな黒のワンピースを買って参列した。
日本ではそれは使えないので母の昔着ていたものを
引っ張り出してもらい、靴は妹から借りた。

けびは以前大阪で母に買ってもらったスーツを着た。
メルボルンで音楽会などに行く時にスーツが無くて困ると言ったら
母が買ってくれたらしい。

昨日今日と慣れないパンプスで足が辛い。
今日は斎場までは普通の靴で移動して、中で履き替えることにした。

葬儀式では、米子からかけつけてくださった父の親友が
昨日突然お願いしたにもかかわらず、
素晴らしい弔辞を述べてくださった。

その中で、小学時代のエピソードが出て来た、それが印象的だった。
仲良し4人、それぞれの誕生日にそれぞれの家でカレーライスを
作ってもらい、それをみんなで食べたという話。
この話は父から聞いたことがなかったので、
いったいどんなカレーだったのだろうかと気になった。
知っていたら再現して一緒に食べてみたかったな、そう思った。

今日もたくさんの方々に来ていただき、無事に式を終えることができた。

火葬場(市営斎場)は車で少し移動したところにあり、
いったんそこへ移動して、父の肉体と別れを告げた。
骨上げまでの時間、また斎場へ戻って食事。
昨日は従姉に声をかけられた時に泣いてしまったが、
今日は叔母たちからの質問に笑いながら答えられる自分がいた。

骨上げの時間になって再び火葬場へ。
職員の方がそれはとてもとても丁寧に説明してくださり、
骨だけになった父と対面した。

長年糖尿病を患い、多々不摂生な生活をしていたにもかかわらず、
父の骨はとても立派で、きれいに横たわっていた。
それぞれの骨の部位や色についての説明を受け、
足もとから順番に骨上げしていく。

きれいに収まるように心砕いていただき、骨上げの儀式は終わった。
棺ギリギリにおさまっていた父の体は、
手で抱えて持つことのできる骨壺の中に骨となっておさめられた。
もちろんすべての骨を壺の中におさめたわけではないが、
本当に小さくなってしまった。

目を閉じたまま、もう話しかけてくれなくなった父の姿を見た。
間違いなく私は父の骨を拾った。
それでもまだなお、実感がわかなかった。
長い間看病したり、同居していたところからの別れなら、
もっと違う感情が生まれていたのかもしれないが、
大阪を離れ上海に定住して12年、突然旅立った父との別れは、
夢を見ているようなそんな感じだった。
決して父の死を受け入れたくない、認めたくないと
思っているわけではなく、ただただ実感がわかない、
それが今の正直な気持ち。

本当に父はもういないのだと実感するのは、
いつのことなのだろう。
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