シャンハイクラシノテチョウ

上海老婆生活指南と*tsubameのめ*の内容を統合
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上海19参Ⅲ老場坊・其の参

2013.01.19 Saturday | 街角探険

またまた続きなのです。

飲食店やオフィスとして使われている部屋がありますが、
空いているところも少なくないので、
ゆっくり歩いてまわると結構時間が過ぎていました。

ようやく1階までおりてきて、お花屋さんの横を見ると、
落ち着いた色ではあるものの、何やら目立つ扉がありました。

上海19参Ⅲ老場坊20

鍵がかかっているため中を見ることはできませんでしたが、
いくつも並んだその扉と扉の間には柵の奥に牛の顔があるマークが
貼られていました。
よく見ると、「禁閉室(Confinement room)」と書いてあります。
牛を監禁するってどういうことなんでしょう。

ここにはいくつかの扉がありましたが、
しかし多くはありませんでした。
1つを花屋さんが使っていて、そーっとのぞいてみたのですが、
明かりがなければ暗いただのコンクリートの箱のような小さな部屋でした。
すべてが同じ構造だったのかは定かではありませんが、
何を目的として作られたのかが全くわかりません。

ここでは牛になるべく恐怖心やストレスを与えないようにして
牛という生き物から食肉へと加工して行ったと聞いていたので、
もしかすれば病気や何かしらの問題があって食肉に適さないと
判断された牛が閉じ込められたのかもしれません。

上海19参Ⅲ老場坊22

24角形の建物の1階部分にはこのようなものが残っていました。
この黒い金属の柵の後ろは狭いスペースしかありません。
上へと続くコンクリートの筒には2つの穴があいていました。
穴を下から撮ろうと何度か試みましたが、黒い柵があるため、
上手く撮れませんでした。かなり大きな穴が上まで続いています。
不要となった何かを上からこの穴を通して下へ落としていたのかな、
そんな風に思いました。

上海19参Ⅲ老場坊24

ほとんど予習をしないまま訪れたので、
若干消化不良気味のままとなりましたが、
時間の都合もあり外へ出ました。

柱の形も美しいです。

上海19参Ⅲ老場坊26

南側から観るとこんな感じ。
車がたくさん駐車されていて邪魔なんですけど、ぷんすか。

上海19参Ⅲ老場坊27

こちらは西側にある別棟。煙突が気になります。
ここは今回行ってみませんでしたが、廃棄処分となったものの
処理場だったそうです。
単に不要となったものを焼却していただけではなく、
脂肪から石鹸などに使う油脂を抽出したりもしていたそうです。

夏の日はとても気温が上がる上海においても、
この建物の中ではかなり低い温度を保つことができたそうで、
食肉加工されていく工程も含め、大変衛生的で品質の良い食肉を
生産していた場所だというこの建物。
上海のみならず中国各地や海外へも食肉を供給していたといいます。
立派な施設に恥じない、仕事に誇りを持った職人さんたち、
私たちのために切り刻むその動物たちへの感謝を込めて、
無駄にしないよう丁寧に仕事をされていたのではないでしょうか。

動物を生き物だと思わない、金儲けのためならずさんな管理も
化学品でごまかすことも恥だと思わない、消費者のことも考えない、
そんな一部の従事者たちにここで学んで欲しい、そう強く感じました。

私個人としては、リノベーションされた商業施設という観点ではなく、
昔の人たちの知恵、工夫、生きざまを知る場所の一つとして、
またコンクリートの冷たさを冷たいと感じさせない美しいデザインを
楽しみながら歩いてみて欲しいなと思います。

もうちょっと勉強してまた行くぞ。


上海19参Ⅲ老場坊
 上海市虹口区沙涇路10号/溧陽路611号(x海寧路)
 軌道4号線/10号線「海倫路」2号出口 徒歩10分-15分
 http://www.1933shanghai.com/
 TEL:(021)6888-1933、400-888-1933
 営業時間:9:00-22:00
author : つばくろん(二姐) | - | -

上海19参Ⅲ老場坊・其の弐

2013.01.19 Saturday | 街角探険

続きです。
迷宮の中を歩くのは大変です。
どこからどのように攻略していけばよいのかがわかりません。
そーっと階段をのぞきこんでみます。

上海19参Ⅲ老場坊9

何だか怖い。のでここはパス。

上海19参Ⅲ老場坊10

スロープになっているこの道は「牛道」。
この道を牛が歩いて2階と3階にあった加工処理の部屋で
食肉へとなっていったのです。
なぜか突然『ドナドナ』のメロディーが口をついて出て来て、
母娘二人で♪あ〜る晴れた ひ〜るさがり……♪と歌いながら
この道を歩きました。

上海19参Ⅲ老場坊11

この歌が牛のことを歌っているのではない、ということを
知ってはいたのですが、それでもこのスロープを下っていると
浮かんでいるのはやはりこの歌でした。

上海19参Ⅲ老場坊12

牛はこの道を歩く時、自分の最期を感じていたのだろうか、
毎日百頭以上の牛がここへ運ばれて来たというから、
わずかな間隔だけを残して列をなして歩いていたのだろうな、
そんなことを考えていると、フクザツな気分になります。

上海19参Ⅲ老場坊13

その牛道から見える複雑に入り組んだ道、
いろいろな幅があります。
牛の大きさを仕分けたり、病気の牛を選別するために
設けた通路など、一見ごちゃごちゃになっているように見えるそれらの道は、
実に合理的にかつ衛生的に作業ができるように作られていたそうです。

上海19参Ⅲ老場坊14

この建物は英国人のBalfoursという人の設計で、
極東初、極東一の屠畜場だったそうです。
同様の規模の物が当時アメリカと英国にあって、
それらも彼の設計だったそうなのですが、
彼のフルネームがわからないこともあって、
彼の細かなプロフィールやその2カ所の屠畜場の写真が見つからず、
とても気になっています。

上海19参Ⅲ老場坊15

かくれんぼできます(いや、しなくていいです)

上海19参Ⅲ老場坊16

空中舞台の床だともうわかっているのに、
少し歩いては天井を見上げてシャッターを切ってしまいます。

上海19参Ⅲ老場坊17

歩いて来た道を振り返って見つめ直してしまいます。

上海19参Ⅲ老場坊18

下りながら見入ってしまいます。

そう、「何々したい」というよりも、ついつい「してしまう」、
そんな空間が広がっています。

上海19参Ⅲ老場坊19

ある場所から観るととても直線的な世界が広がり、
また別の場所から観ると曲線的な世界が広がる、
直線と曲線の混ざりあう複雑な構造が
独特の美しさを出しています。


「其の弐」で終わるつもりだったのに、まだ続きます。
author : つばくろん(二姐) | - | -
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